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第38回ジャパンオープンボウリング選手権

ジャパンオープンマスターズで優勝したのは、若干二十歳のプロボウラーでした。
決勝戦を傍で観戦できる幸運に恵まれましたが、勝利が決まった時に感極まった彼の気持ちが伝わってきて、こちらも涙腺のセーフティーロックが外れてしまいました。
今回のジャパンオープンは、以前よりもプロボウラーが手にする賞金額が大幅に減額されています。
もともと従来が原資に対して無理な賞金設定でしたので、正常化したと言うべきかも知れませんが、それでも賞金が減ってしまったのでプロの参加が減るんじゃないのかと、実は不安を持っていました。
さらに優勝賞金がかつてほどのビッグプライズではありませんから、優勝の感動が減殺されるかも知れない、と心配でした。
たまたま若手プロが初優勝しましたが、仮に優勝経験の豊富なプロが優勝していても、優勝の感激は賞金額云々ではなかったんじゃないのかな、と信じています。
あれだけの強豪ボウラーを退けて優勝することは、並大抵のことではありません。
その至難の結果を得た達成感が、もっとも重要なのだと思います。
賞金額ではなく、参加選手のクオリティレベルが優勝の価値を担保していると信じたいです。
そうは言っても「プロボウラー」ですから、もっと賞金を得られる機会を与えてあげたいと思います。
そこで未熟な筆者は業界の大先輩に、プロボウラーもPBAリージョナルに出られたらいいですね、と聞いてみました。
すると、あれはアマチュアも賞金を貰えるからJPBAとしては認められないんだよ、と教えていただきました。
米国ではアマチュアが賞金を得るトーナメントが一般的です。
アマチュアボウラーの賞金収入が増えていき、ボウリングでの賞金稼ぎが本業化してプロボウラーになる、という感じでしょうか。
PBAツアーメンバーが強過ぎてアマチュア参加者が減ってしまうという理由で、PBAツアーライセンスのあるボウラーを閉め出すトーナメントもあり、それを理由にあえてPBAツアーライセンスを取得しない強豪ボウラーも多いと聞きました。
ボウリングの歴史資料に「1966年(昭和41年)、JBCではアマチュア規定を厳しく設定しハウスインストラクターを含めてプロ的行為を行うボウラーに対して風当たりをつよくする。これが火付け役となり1967年(昭和42年)1月27日、日本プロボウリング協会(JPBA)が19名の男子プロボウラーによりスタートする」とありますから、過熱するボウリングブームが公序良俗を乱すことを防ぐために、アマチュアボウラーとプロボウラーを分ける必要が当時はあったのでしょう。
オランダ移民によって持ち込まれ全米に広まった「九柱戯(ナインピンズ)」が賭博の温床として法律で禁止され、ナインピンズじゃなきゃいいだろうとテンピンズが発明された歴史がありますが、テンピンボウリングになってからも、金品を賭けて勝負を楽しむアダルトな遊びでした。
技量と偶然性のバランスが程良いボウリングは、賭けて競うにはもってこいのゲームなんですね。
およそ賭博が法律で禁止されたり道徳的に戒められるのは、それによって身を滅ぼす人が出るほどの麻薬性があるからです。
それがビジネスとしてのボウリングの、秘めた商品力でもあるわけですが。
さて、ボウリング大会の参加料から賞金を払い戻すことは、現在の日本の賭博法令に抵触します。
ここが米国の法令との違いのようで、日本の場合、賞金を出すためには別途賞金原資を用意する必要があります。
つまり賞金スポンサーが付かないと、賞金は出せません。
プロライセンスとは賭博法令の適用外となる法的資格ではなく、JPBAという組織が発行する私的な資格ですから、参加者で持ち寄ったお金を順位に合わせて再配分したらプロボウラーでも賭博行為になります。
賭博法令の下にはプロとアマチュアの区別はありません。
法律が「職業的博徒」を認めるわけがありません。
プロしか賞金をもらえないというルールは、大昔の過熱したボウリングブームの中で公序良俗を守るために作られた、ボウリング界独自のものです。
国際試合でも賞金は出ますが、参加選手の大半はアマチュアです。
かつて共産国が国家予算からスポーツ選手に報奨金を出して強化していたことに対抗して、資本主義国家ではアマチュアスポーツにスポンサーが付いて賞金を出すことが常態化してきました。
あれほどピュアなスポーツボウリングを目指していたJBCでさえも、時代の変遷に合わせて柔軟化してきています。
ボウリングトーナメントの賞金スポンサーが得難い現在、数少ない賞金スポンサー付きトーナメントには、プロボウラーの参加を認めてあげて欲しいと願います。
あれほど数多くの優秀なボウラーを抱えている団体なのですから、その技量を発揮できる数少ない舞台を自ら遠ざけては勿体無いと思うのです。

カテゴリー: ボウリング業界

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