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バズ・マーケティング

大手広告代理店と打ち合わせをしていると、広告用語がよく出てきます。
宣伝媒体の売り込みなどのプレゼンテーションでは、説明を聞く相手を広告業界の外の人間と意識して準備してきてくれているので、資料や言葉は解りやすい表現になっていますが、取引を前提としてこちらが「担当者」として会っている場合は、いつの間にか広告業界の人たちに取り巻かれて、広告用語が飛び交うようになります。
もちろん広告業界の人ではない筆者は、解らない言葉をそのままにしていては打ち合わせになりませんので、知らない言葉については質問し、さらに帰ってからネットで調べたりします。
この1年ぐらいは「バズった」とか「○○をバズって」という言葉をよく耳にしました。
『バズマーケティング』とは「口コミ」で市場を開拓することで、「バズった」とは「口コミで広まった」という意味です。
自然な口コミだけに頼っていては時間がかかる場合に、SNSなので流布させる戦術を「バイラルマーケティング」と呼びます。
バズマーケティングでは「誰でも知っていること」を基軸にして、肯定的な噂話が広がることで、信用と知名度を勝ち取りセールに繋げることが基本となります。
ここで筆者の失敗談を書きますと、テレビCMを作る時に、ボウリングのように「既に誰もが知っているもの」の場合、その映像では新奇性に乏しいために「バズらない」と考えられます。
そこで、奇抜な映像によってボウリングCMを作ってみたのですが、新奇性からCM映像そのものはバズったものの、セールスにはいまひとつ繋がりませんでした。
ボウリングという商品が含有しているものでバズらないと、ボウリングのセールスにはならないのだと、勉強になりました。
肯定的な情報をバズらせるには消費者の信用が不可欠であり、企業側からの情報発信に対して消費者は『眉に唾する』ものなので、バイラルマーケティングでは秘かに業界側ではないと信じられる著名人を発信元にすることが効果的なのですが、ある健康食品でそれが露見したために、報酬を貰ってブログで情報の流布を図った芸能人が糾弾される事件もありました。
「健康維持・促進」の効果は体を動かすボウリングなら「たぶんありそう」だと誰もが信用しますが、ボウリングをすることとしないことの健康に及ぼす結果の差、また、他のスポーツ種目やスポーツジムとの比較検証を大がかりに実施した統計データが、残念ながら存在しません。
わずかに田中喜代次先生の研究結果がありますが、ボウリング業界で発行しているその著作は、スポーツすることは体に良いので、たまたまボウリングの好きな先生がボウリングをお薦めしている、という範囲を出ません。
商売人ではなく科学者である田中先生の、科学者としての責任感と公平さが表れた、きわめて当然な正しい姿勢の著作ですが、ボウリングをセールスしたい身になれば、いささか物足りないものではあります。
しかし、これとてもボウリング業界側からの情報発信でなければ、なまじ「売らんかな」という臭みもなく、科学者の真摯な姿勢がにじみ出ていますので、バズったらボウリングの商品価値を大幅に引き上げてくれるものだと思います。
田中先生の研究結果にマスコミのスポットライトが当たるチャンスもあったかも知れない『東京五輪正式種目候補』というニュースバリューを逃したことは、やはり我々の業界にとって痛手だったと思います。
東京五輪に関しては、関係者はほんとうによくやっていたと聞いていますので、結果で責めることはしませんが。

カテゴリー: ボウリング業界 経験論

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