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オートスコアラー導入顛末

稲沢グランドボウルのリニューアルに関して頭を悩ましたのは、オートスコアラをどうするか、であった。
モルガン・スタンレーによってリニューアル投資を受けていたグランドボウルチェーンのセンターでは、既に「キュービカ」を導入されていた。モルガン・スタンレーから見放されてリニューアルされなかった稲沢グランドボウルだけが、平成初期に導入された古い型のジェトロニクスオートスコアラーのままだったのだ。
レジャーボウリング指向の「キュービカ」は、ボウリングマニアではないモルガン・スタンレーがいかにも選びそうなビジュアルであったが、いつかは世界選手権の会場となる夢を抱いて稲沢グランドボウルを再生した僕としては気に入らず、オートスコアラーを一旦白紙の状態で選び直したいと考えた。
そこから、各社の売り込みに対応することとなった。シャープやNTTの各代理店に加え、導入実績のある「キュービカ」はイタリアやアメリカから幹部社員が来日し、ブランズウィックの副社長(何人もいるうちのひとりだけどね)とも商談した。もちろん通訳を介してだけど。
総合的に判断して、日本のボウリング場経営に最適化していたのは、既にラウンドワンが導入していた「テレシステムズ」だったけど、ラウンドワンの二番煎じを嫌う抵抗感が社内に強く、また、スポーツボウリング指向としてはブランズウィックも捨てがたい魅力を持っていたけれど、日本国内での実績が乏しい。
1フロア116レーンという巨大な規模では、一斉配信の通信速度や、成績集計・売上管理や顧客分析などの信頼性も考慮しなければいけない。
迷っていたらオーナーから、「とりあえず5億もあれば足りるやろ?」と国内開発を提案された。自社開発して、いずれはビジネス化しようと目論んだのだ。システム開発の会社を何社か当たり、ソフト的には最適なものを作る手応えを得たけれど、問題はハード面であった。
ボウリング場の端末は老若男女の消費者と様々な接触があるため、その損耗や劣化は銀行ATMの比ではない。ハードウェアを民生品に頼るプランでは長期的に設備調達リスクが高く、さりとて専用機を作るのは先行投資リスクが高すぎる。
結局、既に社内で導入済みの「キュービカ」の備品共有メリットが大きいと判断したのだけれど、僕が望むスポーツボウリング向けとしての大幅なデザイン変更を飲ませるのに苦労した。
ギネス世界記録の巨大ボウリング場への導入実績が大きな販売アドバンテージとなるはずだと説得してなんとか合意を取り付けたが、実際に希望通りのシステムとなるまでには、稼働させながらのアップデートが続き長い時間を要した。

カテゴリー: 思い出話