LTBで初心者に教えるものに「3:1:2理論」というものがあります。
これは、アプローチ上のロケータードットの中の15フィートマーカー、テンボードエイムスパット(2番スパット)、そしてヘッドピンの、すべてを水平に真横から距離が、ロケータードットからファウルラインまで15フィート、ファイルラインから2番スパットまでも同じく15フィート、そしてファウルラインからヘッドピンまで60フィートあることから、2番スパットからヘッドピンまでを「3」としたら、ファウルラインから2番スパットまでは「1」であり、15フィートマーカーから2番スパットまでが「2」となると概算して単純化し、この比例式から実戦に使う「3:6:9理論」を理解させるという手法です。
実際には、アプローチの15フィートマーカーと12フィートマーカーの間に立つ人がほとんどですから、ファウルラインまで15フィートとするのは乱暴です。
ファウルラインから2番スパットまでも、厳密には15フィートにプラスマイナスできる許容範囲があります。
しかも、ファウルラインから2番スパットを通る直線上の60フィート先には、ピンは立っていません。
(ヘッドピンは、ファウルラインからセンタースパットを通る直線上にあります)
つまり、厳密には「3:1:2」ではないのです。
「3:6:9理論」においても、左右に立ち位置を変えて起こる錯視の個人差を「パーソナルナンバー」として、動く板目にプラスマイナスする必要が本来はありますが、技量程度の低いうちはそもそも「パーソナルナンバー」など存在しません。
アベレージボウラーになれば解りますが、競技ボウリングの実戦ではボールが曲がりますし、コンディションでその曲がりも変化しますから、直線距離の比例式がそのまま使えるわけではありません。
局面によってボールを替える現在のボウリングでは、説明は更に複雑化します。
ハウスボールを使う初心者でさえも、回転によって球道は直線ではなく、しかも投げるたびに違ったりします。
直線コースを投げられる人のほうが稀だと言っていいでしょう。
このように我々は、初心者がすぐには利用できず、上達するとそのままでは利用できないと知ることになる理論を教えているわけですが、まったくの初心者にボウリングのエイミング(狙い方)を教授するうえで、考え方を変えていただくためには知っていただく必要があるために、我々は教えているのです。
こんな「3:1:2理論」を初心者に教えていて筆者が思ったのは、「宗教」というものの本質です。
神仏の教えとは本来多角的かつ多義的で、修行して性質円満・感覚鋭敏となった人間ですら、知能や五感ですべてを捉えることは難しいものなのだと考えています。
ましてや普通の人間にとって、いきなり本義の「真理」を説かれても、まったく理解不能なものでしょう。
そこで、我々がボウリング教室で初心者に「3:1:2理論」を教えるように、民衆を真理に導くための解りやすい「回り道」を用意しているのが宗教の教義であり、経典というものはそのように編纂されているのではないでしょうか。
実はそのままでは不完全だけれど、「真理」に近づくためには一旦は理解する必要のある「教え」。
それが「宗教」というものの本質ではないだろうか、と思ったのです。
もしも神仏の啓示が存在するとしたのなら、それはその時代と地域の人間の知識や見識で理解出来るものであるはずです。
だとするのなら、啓示は時間が流れ、人類の知識や見識が進歩するにつれて、陳腐化してしまうものだと考えます。
もちろん、教義や経典を貫く崇高な精神は不朽のものでしょうが、表現や比喩は経典が成立した年代の人間の文化や知識レベルに合わせて、編纂した人間による作為が善意として入り混じっていると考えます。
そして時が経つにつれて、その時代に合わせて表現を変えたほうが民衆の理解に役立つ、と考える人たちが出てきたはずです。
「宗派」が生まれるのはそういう事情ではないのかな、と思います。
「異端」とか「異教」という思想には神性は存在せず、人間が自らの溜飲を下げるために産み出した価値観ではないでしょうか。
ボウリング入門においての「3:1:2理論」が、理解したうえで実際に使える方法論を自ら探し求めなければならないことと同様に、経典や聖書というものも、その示さんとする方向性を理解しつつも、その字句を盲信して事足りるわけではないのだと思うのです。
こう考えると、経典の片言隻語にこだわって進歩を否定する「原理主義」というものは、人類の進歩を妨げるものかも知れないと思い至るわけです。
併せて「神を信じれば行動が許される」のではなく、「善意の行動で信仰を示せ」というものだと、ボウリングの上達過程になぞらえて思うのです。
初心者にボウリングを教えるだけでも哲学できてしまう我々の職業は、なんと素晴らしいものではありませんか。
3:1:2理論から哲学へ
カテゴリー: 妄想(笑)

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