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消費者の輪郭

担当事業所からあがってくる企画案や稟議書を読んでいて頭に浮かんだことを、ここに書きながら考えを整理してみます。
ボウリング場といえども商業ですから、対象は消費者です。
そして、消費者のボウリング場使用目的を大別すると、趣味上達目的と余暇消化目的でしょう。
両者には曖昧な中間層が存在しますが、ここではザックリとふたつに分けて、前者をスポーツボウリング、後者をレジャーボウリングと便宜上呼ぶ事にします。
スポーツボウリングの消費者像は、自分用のボウリングボールとボウリングシューズを所有している人です。
競技会指向が強く上達によって順位を上げることが目的の人と、そこまでは至らず、とりあえず「健康志向」という表向きの目的を掲げている人たち、でも、この人たちだってボウリングが上手くなりたいという欲求は競技会指向の人と変わりません。
「時間をかけても上手くなりたいから自分のボール・シューズを持っている」と言っても過言ではありませんから、競技指向であってもなくてもスポーツボウリングの消費者とは、「ボウリングが上達したい人」で括っていいでしょう。、
ハウスボール・ハウスシューズでプレーする人たちだって少しは「上達したい」という思いはあるでしょうが、上達の条件である自分専用のボール・シューズを持たない時点でその欲求は「意志」とは呼べませんから、ここでは無視します。
さて、大部分のボウリング場スタッフは、プロボウラーは当然の事ながらそれ以外のスタッフも、「ボウリングが上達したい人」か、もしくはそのなれの果てですので、スポーツボウリング消費者のメンタリティーはよく理解できます。
逆に言うと、「ボウリングが上達したい人」のメンタリティーは細かな部分を除けば方向性が狭く、僅かでもスタッフに経験者が居れば捕捉しやすいものだと思います。
もっと言えば、自分自身はボウリングが得意ではないスタッフでも、付き合っていれば「何を喜ぶ客層なのか」が、だいたい掴めてくるものです。
習慣性があり来場回数も多いので、「上達を保証する」教育方法に若干の投資をしても、こういう消費者の取り込みに力を入れるのは当然でしょう。
営業企画も非常に立て易いですから。
一方で、レジャーボウリング消費者のメンタリティーは多種多様ですから、ボウリング場にかなりの人数のボウリングマニアではないスタッフが居たとしても、この消費者の輪郭を掴むことは出来ません。
だから集客企画は「イベント」「プレゼント」「ディスカウント」といった、広く浅いものになりがちです。
レジャーボウリングでも唯一、団体相手の「ボウリング大会」は、親睦・健康など商品特性を打ち出せる福利厚生イベントとして、法人や組合相手に販売する時に幹事役のメンタリティーを把握しやすく売り込みやすいので、どのボウリング場でも扱いやすいものです。
ボウリングブームが去って以降、ほとんどのボウリング場が、個人消費向けにはスポーツボウリング、レジャーボウリングは団体相手に販売、というスタイルに収斂されてきたのも、消費者の輪郭が掴みやすくリスクが少なかったからに違いないでしょう。

逆にノウハウが確立されていない「レジャーボウリングを個人に販売する」には、どうしたらいいでしょう。
余暇消費の手段が多様化した現在、個人レベルでレジャー目的の消費者をボウリング場に呼ぼうとするのならば、レジャーツールの選択肢が多いボウリング場、というのがひとつのソリューションでしょう。
業界最大手のボウリング場チェーンの手法ですが、単にレジャー複合型施設というだけでは不足で、交通の便が良く、設備も常に新しく美しくなければなりませんが、ボウリング場設備に比べて他のレジャー設備の陳腐化・経年劣化が早い、という弱みもあります。
そもそもコストも考えれば、いつでも誰でも選択できる手法ではありません。
可能な手段を考えていくと、レジャーボウリング消費者全体では捉えどころがありませんので、さらにいくつかのセグメントに分ける必要があります。

筆者の大恩人はお酒を飲みませんが、彼が考案したバーは炭酸水ひとつとってもよく考えて選定されており、驚かされました。
曰く「お客様を喜ばせよう、びっくりさせよう、と思えばそうなる」。
どのセグメント相手なら、びっくりさせ、喜ばせることが出来るだろう。
ボウリング業界は今、マーケティングの腕を試される時代です。

カテゴリー: ボウリング業界

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