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既成概念は、まず疑ってみよう

縮小するボウリング産業ってのは、新規参入してくる資本も無いかわりに、新規参入してくる業者も少ないので、そこにチャンスを探す企業も少なくないけれど、そういう企業がボウリング産業に持ち込む企画のベースがとっても甘いのですよ。
きわめて、表層的で短絡的であり、マーケットを分析していないなぁといつも思います。
まあ、そこまでするような企業はボウリング産業の方を向かないですけどね(自嘲)。
僕の考える代表的な誤謬をここにあげておきます。

参加しやすい「大会企画」で固定客を拡大するという「夢」
基本的にハウスシューズユーザーは「点数結果で評価される企画」には乗ってきません。
たとえ下位への飛び賞を工夫しても、そもそも「賞品目当て」でハウスシューズユーザーの参加は増えません。
団体予約のボウリング大会は、概ね「義理」や「しがらみ」が参加動機なので、競技結果による「賞品」が個人消費の動機とするのは誤りです。
自前の道具を持ってボウリングを始める人は、家族・親類に競技ボウラーが居る場合が圧倒的となりつつあり、自然発生的な競技指向ボウラーは「世襲」ないし「遺伝」となりつつあります。
そういう環境に居ない人がマイボールを持って参入してくるケースも否定しませんが、既存のプロアマ競技ボウラーが構成する縦横のつながりにアウェー感を持ち、3年以内にやめていく人が多いのが実情です。
趣味にボウリングを選ぶ人には「人付き合いが苦手」というタイプの人が多い事と、師匠挌のボウラーとの出会いが無く、競い合う同レベルの仲間が出来なかった場合、2年で上達は止まり、3年以内に飽きてくるんですね。
そのサイクルでも参入者が多ければ計算できる「固定客」なんですけど、きわめて少ないから日本からボウリング場が消えていくのです。
したがってボウリング場が「スポーツ商材として集客増」を考えるのならば、同じ競技レベルのコミュニティを作り、優しく親切なコーチを用意することです。
誤ってはいけない事は、「トップボウラー養成を目的とする競技力向上」のような方向性を持たないレッスンであるべきです。
上達の遅い人の脱落を防ぐケアが重要なんですね。
主眼は同レベル(技量も年代も)のコミュニティー作りです。
そういうレベルで飽き足らなくなった人には、JBCやNBFのような既存のボウリングクラブを紹介してあげればいいでしょう。

「団塊の世代はボウリングブームを経験している」という前提

「だからボウリングへの親和性が高い」という認識がまかり通っていますが、僕はこの前提に懐疑心を持っています。
「バブル経済を経験した人は浪費家である」と同じぐらい、乱暴な認識だと思います。
確かに、狂的なボウリングブームの中で青春を過ごした人たちですから、ボウリング体験の数は他の年代よりも多いでしょう。
でも穿った見方をすれば、昭和50年代以降のボウリング不況時のコアな消費者層でもあるのです。
国民の中で「最もボウリングを見捨てた消費者層」なんです。
国民全員がボウリング体験をした世代ですから、逆の見方をすれば「それでもボウリングファンとならなかった強固なボウリング嫌い」という逆説も成り立ちます。
現に昭和50年代以降のボウリング不況時に、ボウリング場を支えてくださったボウリングファンが最も多い世代です。
そうはならなかった人たちは、一般消費者としての一生分のボウリング消費を、若い時に消化し終わった世代なのかも知れません。
だから団塊の世代がマーケットではない、と言うのではありません。
ただ「ボウリングブームの体験者」という前提に捉われてはいけないのです。
余暇消費の選択肢として、「健康」や「新たな属性」を目的として持たせられる企画が必要なんです。

ボウリングを「スポーツ商材」として売り出すには、世界でトップクラスとなる事でしょう。
JBCはそれに取り組んでいますが、JPBAはどうでしょう。
JPBAのコピーみたいなLBOが存在感を示すためには、JPBA以上に「芸能化」するか、さもなければ海外のアプローチに立って賞金を稼ぐことではないでしょうか。
もともと少ない国内のプロボウリングファンをJPBAと奪い合うのではなく、現在のツアー賞金を遠征派遣費に充て、所属プロは世界ツアーで収入を得るべきです。
(とは言え、女子に人気があるのは日本だけですから、芸能化するしか無いかも知れませんが)
世界で通用しないプロスポーツが興業的に成功するはずもなく、我々ボウリング場の経営環境を好転させる力も持ちません。
ボクシングだって世界タイトル戦でもなければ、テレビの地上波に流れる事はまず無いでしょう。
ボクシングよりもはるかにコアなファンが少ないボウリングの「全日本」というタイトルの商品価値を、愛情が邪魔をして客観的に眺められないところにも、ボウリング産業の弱点があります。

カテゴリー: ボウリング業界

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